自分らしく生き抜く
2013年12月11日 10:28 PM
冷たい雨が続きました。
その雨に送られるように、仲間が旅立ちました。
病気が見つかって10年近く。
治療を終えてからの2か月あまりを自宅で過ごしました。
子どものために、家にいてやりたい。
できるだけ一緒に過ごしたいというのが、一番の願いでした。
でも、長く病院での治療を続けてきたので
本当に家で過ごせるのか、なかなか不安が消えませんでした。
医師による訪問診察や、訪問看護がスタートし
少しずつ不安は薄らいでいきました。
「病院は、辛い治療と、悪い検査結果を聞く恐怖の場所だった。
でも、在宅医療は、わたしの気持ちや体調に合わせてくれる。
とても楽になれた」
そう言っていました。
食欲が落ちてからは、親友が好きなものを作ってくれるのを楽しみにしていました。
リビングの真ん中にベッドを置いて、最期まで家族と共に自分らしく過ごすことができました。
わたしたちが2010年に実施した「がん患者満足度調査」では
自分らしく過ごせる自宅で過ごしたいと希望する声が多く聞かれました。
しかし、家族に負担をかけるなどの理由で遠慮してしまうという現状もうかがえました。
在宅を支えてくれる医療資源の充実。
そこへの確実な連携。
そして、患者・家族への適切な情報提供と精神的なサポート。
残念ながら、地域や医療機関によって格差が存在します。
どこに住んでいても、誰でも
自分らしく生き抜くことができる仕組みを整えていかなければなりません。
がんと就労
2013年12月8日 9:25 PM
晴れておだやかな一日でした。
昨日は、東京秋葉原で開かれた「がんと就労」に関するシンポジウムに登壇させていただきました。
これは、国立がん研究センターの高橋都先生が代表者を務める厚労科研研究班が主催したものです。
医師、看護師、ソーシャルワーカー、そして患者それぞれの立場から
がん患者の就労に向けたさまざまな支援について報告を行いました。
この中で、名古屋第二赤十字病院の赤羽和久先生のご発表は特に興味深いものでした。
乳がんと診断された患者199人のうち、告知直後に退職した人が17人もいたそうです。
告知後、詳細な検査を経て治療法が決まってから
仕事を続けるかどうかを決めてもいいはずなのに
「早過ぎる決断」をしてしまうケースが少なくないというお話でした。
赤羽先生は、医療現場での就労支援は告知時から始めるべきで
まず医師から「仕事はすぐにやめる必要はありません」と一言声をかけることが重要とのご意見でした。
そして休業が必要な期間を含め治療の見通しを患者にしっかり伝えること、
また勤務形態や通勤手段などの就労内容について、医師が理解することも必要だと指摘されました。
わたしもそうでしたが
がん告知というのは、冷静な判断力を奪います。
妙な焦燥感にかられます。
そんなときに、仕事を辞めるなどの重要な決断をすべきではないのです。
最近は、治療と仕事の両立について関心をもつ医療者が増えています。
主治医やソーシャルワーカーなどに相談してみると
仕事と治療を両立する方法が見つけられるかもしれません。
一人で抱え込まないこと
専門家の知恵を借りること
急いで決断しないこと
これが、患者側にできることです。
シンポジウムを主催した研究班では
がん患者の就労を支援するためのさまざまなツールを開発、提供しています。
詳しくは http://www.cancer-work.jp/tool/index.html
がん登録推進法 成立
2013年12月6日 10:20 PM
これまでになく注目されている国会。
きょうの衆議院本会議で、がん対策に関する重要な法案が可決されました。
「がん登録推進法」です。
これで、ようやくがん患者のデータベースが整います。
きょうに至るまで、長い道程がありました。
詳細は、国会がん患者と家族の会HP http://cancer-reg.sakura.ne.jp/reference/
こちらをごらんください。
特に、地元愛媛選出の塩崎恭久先生にはご尽力いただきました。
感謝です。
わたしたち患者のデータが、次のがん対策に生かされることにつながるのが「がん登録」です。
法律ができて、本当の取り組みはこれからです。
具体的にどう情報収集をするのか?
情報をどう活用するのか?
これからも注目していかなければなりません。
走る、走る
2013年12月1日 10:56 PM
師走に入りました。
先日大学病院へ行ったときのこと。
看護師さんが、廊下の端をまるで競歩のようなスピードで過ぎ去って行きました。
「忙しいけど、院内を走ってはならない」という気持ちがその動きに表れていました…。
わたしは走っております。
昨日朝東京から戻って、その足で今治へ。
済生会今治病院主催の市民公開講座で、
間寛平さんと松野院長先生の対談のお手伝いをさせていただきました。
きょうはおれんじの会例会、その後の理事会。
(こちらは後日報告します)
あすは厚労省の事業の会議のため、東京へ。
12月は、年度末を見据えて会議が目白押しです。
その合間に楽しい集まりもいくつか。
転ばない程度に走ります~。
生き続けるメッセージ
2013年11月26日 10:20 PM
今夜は済生会松山病院で、看護職の管理者のみなさんを対象に
お話をさせていただきました。
参加者はおよそ30人。
90分間の講演です。
医療者向けの講演では、いつもDVDを見ていただくことにしています。
ちょうど写真中央のスクリーンに映っているのですが
3年前に亡くなったわたしたちの仲間、小野光則さんが遺してくれたメッセージDVDです。
小野さんがホスピスに入院したとき、
自分の最後の仕事と言って、これからの医療者のために患者の思いを語ってくれました。
「コミュニケーションとは、お互いの事を知りたいと思うところから始まる」
「医療現場には手のぬくもりが欠かせない」
「その人が納得する人生を歩めてこその天寿。 医療者はそれを支えてほしい」
きょうの研修でも、みなさんが真剣に小野さんの言葉に耳を傾けてくださいました。
きっと明日からの看護に
そして管理者として後輩の指導に活かしてくださるものと思います。
メッセージは生き続けています。
RUN寛平RUN
2013年11月24日 9:19 PM
久しぶりにアポイントのない一日。
明後日の講演の資料を完成させ、机の上に積み重なっていた資料の整理ができました。
新しい週を気持ちよく迎えられそうです。
さて、次の土曜30日に、今治市で済生会今治病院主催の市民公開講座が開かれます。
特別ゲストは間寛平さん。
2008年から2011年にかけて世界一周マラソン『アースマラソン』を完走した寛平さん。
途中で前立腺がんが見つかりましたが、治療をしてなお走り続けました。
マラソンの様子や、病気との向き合い方などのお話をうかがいます。
寛平さん、済生会今治病院の松野院長、わたしも対談に加わらせていただきます。
11月30日(土)午後2時~午後4時40分
テクスポート今治
参加は無料で事前申し込みは必要ありません。
詳しくは http://www.imabari.saiseikai.or.jp/uploaded/life/631_580_misc.pdf
きょうの記事のタイトル『RUN寛平RUN』は
忌野清志郎さんが応援ソングとして作った曲で、忌野さん最後のレコーディングとなったものです。
30日にはマラソンの様子が映像で紹介され、BGMとしてこの曲が流れます。
お楽しみに。
おいしいものへの喜び
2013年11月23日 9:27 PM
ボジョレ・ヌーボー解禁の日、わたしも楽しいお酒をいただいてきました。
おいしく食べて飲めることは、本当に大きな喜びです。
足かけ5か月の入院生活が終わり退院することになった日。
主治医から退院後の生活について説明を受けました。
「何かほかに質問は?」と聞かれ、
「あの…先生、お酒は飲んだらダメですよねぇ?」
「何言ってるの?これからまだ薬を飲むんですよ!!」と一喝。
退院後も経口の抗がん剤治療が3年間続くことになっていました。
3年間、主治医の言いつけを守りましたが、自分の誕生日に一口だけ飲んだことがありました。
そのときのワインのおいしかったこと。
食べられない、飲めないという経験をしたからこそ
おいしいものへの喜びが身に沁みるのです。
仲間のチカラ
2013年11月18日 11:28 PM
きょうは日帰りで東京へ。
来年夏の学会へ向けての会議でした。
羽田空港にも街にもクリスマスツリーが登場していました。
ついこの前見上げた気がするのですが…。
さて、きょうのテーマは「仲間のチカラ」。
以前からメールを通じて交流させてもらっている子宮頚がんの患者さんが
地元で、同じ痛みを経験した人たちの語り合いの場をスタートすることになったと知らせがありました。
最初にメールをもらったのは去年だったと思います。
病気そのものの苦しみ。
子どもを産めなくなった辛さ。
将来への不安。
わたしが病気をしたときに抱えていた痛みと同じ事が綴られていました。
まだ体にもこころにも痛みが残っているようですが
仲間のために一歩踏み出すことにしたとのこと。
とてもうれしくなりました。
同じ経験をした仲間のチカラは、とてもとても大きいです。
信頼できる医療者も支えてくれるそうで、一つずつ丁寧に無理をせず準備している様子が
メールから伝わってきました。
がんばれ。
大学病院学び合いサロン
2013年11月16日 9:56 PM
我が家では、昨日から庭木の剪定中です。
小さな庭ですが亡父が植えた樹がいくらかあり、年に一度はプロの手入れが必要です。
ふだんは放ったらかしの庭が元気を取り戻しつつあります。
さて、毎月第3水曜は大学病院で「学び合いサロン」が開かれています。
2009年、おれんじの会が設立されて最初に医療者と協働で立ち上げた事業の一つです。
医療者と患者・家族が一つのテーマを共に学び合うことが目的で、
毎月1回の開催を続けてきました。
次回は20日、来週の水曜です。
おれんじの会が県から委託を受け製作した
小冊子『みんなの質問ノート』についてご紹介する予定です。
これは、診察室などで医療者に質問するときの助けになればと
具体的な質問例を示したものです。
例えば、最初の説明時の主治医への質問として
「治療法はいつまでに決めなくてはなりませんか?
相談したり考えたりして治療方針を変えてもいいですか?」
暮らしの事に関しては、看護師やソーシャルワーカーに
「仕事と病気のことについて相談できるところはありますか?
会社に伝えるべきことは何でしょうか?」
全部で32の質問項目を記しています。
この小冊子を製作した経緯や、わたしたちの思いをお伝えし
医療者と患者・家族のコミュニケーションについて考えたいと思います。
11月20日(水)午後6時~ 大学病院中会議室
関心のある方であればどなたでも参加できます。
お待ちしています。
インフルエンザ予防接種
2013年11月14日 10:20 PM
きょうインフルエンザの予防接種をしてきました。
接種後、一定の時間を置いて医師が様子を確認してくれました。
去年まで受けていた医療機関では、このような対応はありませんでした。
丁寧な対応に安心しつつ、
このような差を、患者側が事前に知ったうえで医療機関を選択する事の重要性を
改めて感じました。
冬支度の一つが完了。